コミュニティ 2025年10月29日 読了時間: 6分

「もったいない」は、なぜ子どもに響かないの?

uno mao
uno mao
株式会社COLBIO 編集者・ディレクター
北海道を拠点に、イベント企画・運営、編集者として活動中。
「もったいない」は、なぜ子どもに響かないの?

食卓の“正論”を、親子の“共感”に変えるヒント

お皿に、ぽつんと残されたピーマンとにんじん。

それを見た私たちは、つい、いつもの言葉を口にしてしまいます。


「あーあ、残しちゃダメでしょ。もったいない!」


親としては、「食べ物を粗末にしてほしくない」「作ってくれた人に感謝してほしい」という、とっても大切な気持ちから出た言葉。

なのに、子どもはキョトンとしていたり、「だってもう、お腹いっぱいだもん!」と、少しすねた顔をしたり。

私たちがこんなに真剣に伝えているのに、どうしてこの「もったいない」という言葉は、子どもの心にまっすぐ届かないのでしょうか。


その、ちょっと切ない「すれ違い」の理由を、一緒に探ってみましょう。

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「もったいない」の“翻訳ズレ”が起きているかも?

このすれ違いが起きるのには、ちゃんとした理由があります。

それは、大人の言う「もったいない」と、子どもが受け取る「もったいない」の間に、大きな“翻訳ズレ”が起きているからなんです。


理由①:「もったいない」が“抽象的すぎ”て見えない

子どもは、「今、ここ」に生きています。目に見えないもの、実感できないことを理解するのは、ちょっぴり苦手。

大人の言う「もったいない」には、

  • 「農家さんが、一生懸命育ててくれたのに…」
  • 「この野菜を買うために、パパやママが働いたのに…」
  • 「食べ物を捨てたら、地球のゴミが増えるのに…」
  • …など、たくさんの背景が詰まっています。

でも、子どもの目には、目の前の「食べたくないピーマン」しか見えていません。その向こう側にある広い世界は、まだ想像するのが難しいんですね。


 理由②:食べ物の「旅」が見えていない

子どもにとって、食べ物はどこからやって来るでしょう?

きっと、「スーパー」や「冷蔵庫」から、ポンと出てくるイメージが強いはず。

その野菜が、

  • 畑でどれくらいの時間をかけて育ったのか
  • どんな人が、雨の日も風の日も世話をしてくれたのか
  • どれだけ遠くから、トラックで旅してきたのか

…という、食卓に来るまでの「物語」が、すっぽりと見えなくなっています。

だから、それを残すことが、どれだけ「惜しい」ことなのか、実感として分かりにくいんです。


理由③:「もったいない」が“叱る言葉”になっている

これが、一番大きなズレかもしれません。

私たちが「もったいないよ(=大切にしてね)」という気持ちで言ったつもりでも、子どもの耳には、

「もったいない!(=あなたは悪いことをしている!)」

という、“正論パンチ”のように聞こえてしまうことがあります。

「ダメ!」と叱られてしまうと、子どもは「本当はお腹がいっぱい」「この味がどうしても苦手」という、残したい本当の理由を言えなくなり、かえって心を閉ざしてしまうのです。


「もったいない」を“封印”してみる実験

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もし、「もったいない」が伝わらない…と感じたら、一度その言葉を“封印”してみませんか?

そして、言葉で教える代わりに、親子で「実感」を共有する、こんなポイントを試してみてください。


ポイント①:「旅の物語」をお話しする

  • 「もったいない」と言う代わりに、その食べ物がどうやって食卓に来たか、短い物語にして話してみましょう。
  • 「この人参さんね、〇〇さんの畑で、土の中で3ヶ月も眠ってたんだって」
  • 「このお魚、漁師さんが夜中に起きて、寒い海で釣ってきてくれたんだよ」
  • 「物語」を知ると、食べ物はただの「モノ」から、「誰かが届けてくれた、特別なバトン」に変わります。


ポイント②:「小さじ一杯」の約束

  • 「全部食べなさい!」と高く設定したゴールは、お互いを苦しくさせます。
  • まずは、「今日はどれくらい食べられそう?」と、食べられる量を子ども自身に決めてもらいましょう。
  • そして、「これだけは挑戦してみようか」と、「小さじ一杯」だけの小さな約束をします。
  • もし、それが食べられたら、思いっきり褒めてあげてください!「食べられたね!すごい!」という成功体験こそが、「残さず食べよう」という自主性を育てます。


ポイント③:一緒に「作る」冒険に出る

  • 「労力」を実感する、最強の方法です。
  • レタスをちぎる、豆の筋を取る、お米を研ぐ、卵を割ってみる…どんなに簡単なことでも構いません。
  • 自分がちょっとでも関わった料理は、子どもにとって「自分が作った、世界に一つのスペシャルメニュー」になります。「残したくない」という気持ちは、誰に言われるでもなく、自然と湧き上がってくるはずです。


「感情」から始まる、本当のもったいない


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「もったいない」は、大人が子どもに教え込むべき「道徳」や「ルール」である前に、本来は、食べ物への愛情や感謝から、自然に湧き上がる温かい「感情」のはずです。


大切なのは、「ダメでしょ!」と正論で叱ることではありません。

食べ物の背景にある物語や、作った人の苦労を一緒に感じて、「ああ、こんなに頑張って来てくれたんだね。残したら、なんだかこっちが悲しいな」という「気持ち」を共有すること。


食卓を、ルールで縛る場所から、食べ物の物語を共有する場所へ。

そこから、本当の「ごちそうさま」と「もったいない」の心が育っていくのかもしれませんね。


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