ビルの上の“小さな働きもの”と、皇居の“秘密の花畑”
「東京のはちみつ」、と聞くと、どんな場所を思い浮かべますか?
自然豊かな奥多摩(おくたま)や、緑の多い郊外の町でしょうか。
でも、もし。
「銀座」や「新宿」の、あのデパートやビルが立ち並ぶ、
まさに“東京のど真ん中”で、はちみつが採れているとしたら…?
「え、本当!?」
「だって、ビルの周りにはお花畑なんてないよね?」
「ミツバチって、田舎のきれいな場所にいるんじゃないの?」
そんな「?」が、たくさん浮かんできますよね。
その驚きこそ、私たちの「当たり前」をひっくり返す、最高の〈社会科見学〉の入り口です。
今日は、都会の空を飛び回る、小さな働きものたちの秘密を探ってみましょう。
ミツバチさん、ごはんはどこで食べてるの?
この謎を解くカギは、ミツバチさんの「行動力」と、私たちが知らない「東京の本当の顔」にあります。
1. ミツバチさんの、すごい「行動力」
ミツバチは、とっても働きもの。エサ(お花の蜜)を集めるために、巣箱から半径2〜3kmくらいの距離なら、元気に飛んでいくことができます。
2. 都会は「緑の砂漠」じゃなかった!
半径2〜3km。
例えば、もし「銀座」にミツバチの巣箱があったら、彼らはどこまで飛んでいけるでしょう?
地図を広げてみると、そこには「緑の宝島」がたくさん浮かんでいます。
- 皇居(こうきょ): 言わずと知れた、東京の真ん中にある巨大な森!
- 日比谷公園(ひびやこうえん)
- 浜離宮恩賜庭園(はまりきゅうおんしていえん)
- たくさんの「街路樹(がいろじゅ)」:
銀座の「マロニエ(セイヨウトチノキ)」、皇居のまわりの「さくら」、あちこちにある「トチノキ」や「ユリノキ」。これらは全部、ミツバチが大好きなお花の蜜をたくさん出す、立派な“蜜源(みつげん)”なんです。
そう、私たち人間にとっては「ビルだらけの街」でも、空を飛ぶミツバチさんの目には、「あそこに行けば、皇居の森のごちそうがある!」「あっちには、日比谷公園のビュッフェがある!」と、魅力的なレストランがたくさんある街に見えているんですね。
都会のハチミツは、どんな味?
「なるほど、食べる場所は分かったけど…。都会のハチミツって、安全なの?」と、心配になるかもしれません。でも、実は、都会のハチミツにはすごい“トクベツ”があるんです。
トクベツ①:「百花蜜(ひゃっかみつ)」の贅沢
田舎の広い畑だと、その時期は「レンゲ草だけ」「菜の花だけ」と、一種類の花の蜜が集まりがちです。
でも、都会のミツバチさんは、皇居のさくら、公園のトチノキ、ビルの屋上ガーデンのラベンダー…と、ありとあらゆるお花から、ちょっとずつ蜜を集めてきます。
いろいろな花の蜜がブレンドされた、まさに「東京だけのオリジナルブレンド(百花蜜)」。季節によって味が変わる、とっても贅沢なハチミツなんです。
トクベツ②:意外な「安全性」
驚くかもしれませんが、都会は田舎の農地よりも、「農薬」が少ないことがあります。
大きな畑では、作物を守るために農薬が使われることもありますが、都会の公園や街路樹に、広範囲の農薬がまかれることは少ないですよね。
だから、ミツバチさんたちも、安心して蜜を集められるんです。
今日から気軽にできるポイント
この「都会のミツバチ物語」は、遠い世界のファンタジーではありません。
私たちも、その物語にこっそり参加できるんです。
ポイント①:「地元のはちみつ」を探検してみよう!
- 実は「銀座ミツバチプロジェクト」や「新宿みつばちプロジェクト」など、東京のあちこちで、ビルや屋上でハチミツを採る「都市養蜂(としようほう)」の活動があります。
- デパートや地域のアンテナショップで、「〇〇産はちみつ」を探してみませんか?
- 「これは皇居の桜の味がするかも?」「これは夏の街路樹の味かな?」と、親子で“東京の味”を当てるゲームをするのも楽しいですよ。
ポイント②:「街路樹(がいろじゅ)」を、見上げてみよう
- いつも何気なく歩いている、オフィスの前の並木道。
- 次に歩くときは、ふと見上げてみてください。「あ、今、花が咲いてる!」「これって、ミツバチさんのごちそうかも!」
- いつもの道が、ミツバチさんたちの「レストラン通り」に見えてくる。その“視点が変わる”ことこそ、最高の社会科見学です。
ポイント③:わが家のベランダも「おすそ分け」
- もしベランダがあるなら、プランターに一鉢、「ハーブのお花(ラベンダーやミントなど)」を置いてみませんか?
- わが家でハチミツが採れるわけではないけれど、「飛んできたミツバチさんが、ちょっとひと休みできる“給水所”」を、開いてあげる。
- 私たちも、東京の生態系にこっそり参加できる、素敵なアクションです。
ミツバチは、「つながり」のメッセンジャー
東京の真ん中で、本当にハチミツは採れていました。ビルとビルの間を、公園から皇居へと飛び回り、緑の点と点を「線」でつないでくれる、小さなメッセンジャー。
彼らが運んでくる甘いハチミツは、「コンクリートだらけに見えるこの街も、ちゃんと自然とつながっているんだよ」と教えてくれる、大切な“しるし”なのかもしれませんね。



