値札の裏側にある、お天気と経済の「なぜ?」
「あれっ、キャベツ、高っ!」
スーパーの野菜売り場で、思わず声が出てしまった経験はありませんか?
先週はまるごと一玉98円だったのに、今日はなんだか小さめなのに298円…。
「もしかして、私、買うタイミング間違えちゃった?」
「今夜はお好み焼きにしようと思ったのに、どうしよう…」
お給料日は変わらないのに、野菜の値段だけがジェットコースターみたいに変わる。
家計をやりくりする私たちにとって、これは本当に悩ましい問題ですよね。
でも、この「値段の差」は、実は日本のどこかで起きている「ある出来事」を、私たちに教えてくれるサインなんです。
今回は、家計を悩ませるこの問題を、親子で楽しむ「経済」の〈社会科見学〉に変えてみましょう。
値段は「誰」が「どうやって」決めているの?
この謎を解くために、まずは「野菜の値段の決まり方」を見ていきましょう。
「キャベツが298円」と決めているのは、スーパーの人でしょうか? それとも、農家さんでしょうか?
実は、そのどちらでもない(ことが多い)んです。
多くの場合、野菜の値段が決まるのは、早朝の「卸売市場(おろしうりしじょう)」です。
- 全国の農家さんから、たくさんのキャベツが市場に集まってきます。
- スーパーや八百屋さんなど、「キャベツを買いたい人」も集まります。
- そして、「競り(せり)」というオークションが始まります。
- 「このキャベツ、買いたい人〜!」
- 「はーい!」「はーい!」
- 買いたい人(需要)が多ければ値段は上がり、売りたいキャベツ(供給)が多すぎれば値段は下がります。
つまり、キャベツの値段は、この「買いたい人」と「売りたい量」のバランスで、毎日決まっているんです。
98円と298円を生み出す「2つの理由」
「じゃあ、どうして昨日と今日で『売りたい量』が変わるの?」
それこそが、今回の最大のナゾですよね。
その理由は、主に2つあります。
1. 理由その①:お天気と「畑の事情」(供給量)
キャベツは、私たちと同じように、とてもデリケートです。
- 雨が多すぎると… 病気になったり、根っこがうまく育たなかったりします。
- 台風が来ると… 葉が傷ついたり、倒されてしまったりします。
- 暑すぎたり、寒すぎたりすると… 元気に大きく育ちません。
つまり、天候が悪いと、収穫できるキャベツの量(=供給)がガクンと減ってしまいます。
市場に集まるキャベツの数が少ないのに、「買いたい人」はいつも通りいる。
その結果、「競り」で値段が上がってしまうのです。これが「298円の日」の正体です。
逆に、お天気に恵まれて、キャベツがすくすく育ちすぎると「豊作」になります。
市場にキャベツが溢れるほど集まるのに、「買いたい人」の数はいつも通り。
その結果、「競り」で値段が下がります。これが「98円の日」の正体。農家さんにとっては、少し困った事態かもしれません。
2. 理由その②:産地の「お引越し」シーズン(産地リレー)
私たちは一年中キャベツを食べていますが、同じ場所で一年中作っているわけではありません。
- 冬〜春: 暖かい場所(例:愛知県や千葉県)のキャベツ
- 夏〜秋: 涼しい場所(例:群馬県や長野県)のキャベツ
こんな風に、季節に合わせて産地がバトンタッチしていくことを「産地リレー」と呼びます。
このバトンタッチの時期(春の終わりなど)に、もし両方の産地が天候不順になってしまうと…市場に届くキャベツが一度に減ってしまい、値段が急に高くなることがあるんです。
今日から気軽にできるポイント
「理由は分かったけど、やっぱり高いのは困る!」
そうですよね。でも、この仕組みを知った私たちは、もう値段に振り回されるだけではありません。
今日から気軽にできる、3つのポイントをご紹介します。
ポイント①:「値段」を“お天気ニュース”として読んでみる
- キャベツが298円の日。「ああ、今、日本のどこかの畑が先月の台風で大変だったんだな…」と、値段の裏側にある「畑の物語」を想像してみましょう。
- 98円の日は、「わぁ、豊作だ!農家さん、ありがとう!」と感謝してみる。買い物のイライラが、少しだけ社会とつながる面白さに変わるかもしれません。
ポイント②:「今週の底値ヒーロー」を探検しよう
- キャベツが高い日に、無理して買う必要はありません。
- 「キャベツがお休みなら、今週の主役は誰だ?」と、親子でスーパーを探検するゲームをしてみましょう。
- 値段が安定している「もやし」や「きのこ類」、あるいはその日たまたま安い「白菜」や「レタス」かもしれません。その日の「底値ヒーロー」を見つけて、献立を考えるのも楽しいですよ。
ポイント③:「98円の日」は、未来への仕送りデー
- キャベツが安くて新鮮な「98円の日」は、自然からのボーナスです。
- そんな日は、少し多めに買って、使いやすい大きさにざく切りにして、冷凍保存(ストック)しちゃいましょう!
- 炒め物やスープに凍ったまま使えるので、「298円の日」の家計を助けてくれる、「未来の自分への仕送り」になりますよ。
スーパーは、生きた「経済」の教室
野菜の値段が変わるのは、家計にとっては大変なこと。でもそれは、私たちの食卓が、遠くの畑の「お天気」や、市場の「経済のルール」と、しっかり繋がっている証拠でもあります。
値札の数字にイライラする代わりに、「今日はどんなニュースが隠れてるかな?」と眺めてみる。
そう思うだけで、いつものスーパーが、親子で社会を学べるワクワクする「教室」に変わっていくはずです。


