ポチッと押す前に、親子で考える“便利さ”の裏側。
ネットスーパーや、いつもの通販サイト。
「あと500円で、送料無料!」
その言葉を見ると、「あ、じゃあこれも買っておこうかな」と、ついカゴに入れてしまいますよね。
雨の日でも、重たいお米や飲み物でも、玄関まで届けてくれる。しかも「タダ」で。
こんなに便利で、ありがたいことはありません。
でも、ふと立ち止まって、不思議に思いませんか?
荷物を運ぶには、トラックのガソリン代もかかるはず。
汗を流して運んでくれる、ドライバーさんのお給料もかかるはず。
それなのに、なぜ「無料」なのでしょう。
その“送料”は、一体どこから来ていて、本当は誰が払っているのでしょう?
これは、「便利さ」の裏側に隠された、大切な「お金と人の流れ」をめぐる、親子のための〈社会科見学〉です。
「無料」という名の、3つの“カラクリ”
まず、大切なことから。
この世界に、本当の「無料(タダ)」は、ほとんどありません。
私たちが「払っていない」ように見える送料も、必ず、誰かがどこかで負担しています。
その「誰か」は、大きく分けて3つのパターンに分かれます。
1. 実は「私たち自身」が払っている(商品価格への“上乗せ”)
- 一番多いのがこのパターン。「送料」という名前ではなく、最初から「商品代金」の中に、こっそり含まれている(上乗せされている)ケースです。
- 例えば、「送料別:2,500円+送料500円」だったものが、「送料無料:3,000円」になっているだけ、ということも。
- 私たちは「送料が無料になってラッキー!」と思っているけれど、実は気づかないうちに、しっかり送料分も払っているんですね。
2. 「お店の人」が払っている(広告費としての“負担”)
- 「送料無料」を、お店が「広告」や「サービス」として考えて、負担してくれているケースです。
- 「送料を無料にしてでも、うちのお店で買ってほしい!」という、お店から私たちへのアピールなんですね。
- この場合、お店の利益は少し減ってしまいますが、「お客さんが喜んでくれるなら」と頑張ってくれているパターンです。
3. 「運ぶ人」が払っている(現場への“しわ寄せ”)
- これが、今、私たちが一番考えなくてはいけない問題かもしれません。
- お店が「送料無料」の競争をするために、荷物を運ぶ物流会社さん(宅配業者さん)に、「もっと安く運んでよ」と、とっても安い値段でお願いしているケースです。
- その結果、安い運賃でたくさんの荷物を運ばなければならなくなったドライバーさんたちが、休憩も取れないほど忙しくなってしまっている…。
- 私たちの「便利」や「お得」が、もしかしたら、荷物を運んでくれる現場の人たちの、大変な頑張りの上に成り立っているのかもしれないのです。
今日から気軽にできるポイント
「じゃあ、送料無料は、使っちゃダメなの?」
いえいえ、そんなことはありません。便利なサービスに感謝しつつ、その「裏側」をちょっとだけ知っておく。
そして、私たちの「選び方」を、少しだけアップデートしてみませんか?
ポイント①:「本当に今、必要?」と、一呼吸おく
- 「送料無料にするために、あと〇〇円買おう」
- …これ、お店の人の見事な「作戦」に、私たちが乗せられている瞬間です!
- その「ついで買い」は、本当に今、必要なものでしょうか?
- 「送料無料」という言葉に踊らされず、「本当に必要なものだけを、必要な時に買う」と一呼吸おく。それだけで、お財布にも、物流の現場にも優しくなれます。
ポイント②:「おまとめ便」や「ゆっくり便」を選ぶ
- もし注文するときに選べるなら、「お急ぎ便」ではなく、「通常便」や「おまとめ配送」を選んでみませんか?
- 荷物を何回も分けて運ぶより、一回でまとめて運んだ方が、ドライバーさんの負担も、トラックが使うガソリン(CO2)も、ずっと少なくて済みます。
- 「急がないよ」「まとめて大丈夫だよ」という私たちの選択が、現場を助ける大きな力になります。
ポイント③:「ありがとう」を、言葉にする
- いちばん簡単で、いちばん大切なことです。
- 玄関で荷物を受け取るとき、ドライバーさんに「ありがとうございます」「いつもお疲れさまです」と、笑顔で一言そえてみましょう。
- 「無料」という言葉の裏で、私たちの生活を支えてくれている「人」がいる。その当たり前に気づき、感謝を伝えることこそ、親子でできる最高のアクションです。
「選ぶ」ことは、「応援する」こと
「送料無料」の裏側には、必ず誰かの「お金」や「労力」が隠れています。
その仕組みを知った上で、私たちは何を選ぶか。
安いから買う? 便利だから急ぐ? それとも、少しだけ待ってみる?
スーパーで「平飼いの卵」を選ぶことが、ニワトリさんの暮らしを応援することにつながるように。
ネットで「ゆっくり便」を選ぶことも、ドライバーさんの働き方を応援することにつながっています。
私たちの「ポチッ」と押す指先は、未来の社会をどうしたいかを選ぶ、小さな「投票ボタン」なのかもしれませんね。


